春。さよならを言えない俺に、じゃあ、また。
俺は郁と違って別に高校生活が嫌いだったわけじゃない。友達もできた。休み時間にくだらない事で笑う程度の友達だけど。
そんな中、どこかでいつも歌がながれていた気がする。
例えば、学校からの帰り道なんとなく空を見上げた時、あるいは眠気に負けそうになりながら窓から外を見た授業中に、視界に入ったバックネットのその向こうから、歌を聞いた気がした。美しいあの人の面影とともに、それを聞いた。
覚えているんだ。
彼女の声も、微笑を浮かべた横顔も、俺じゃないどこかを見ていたあの瞳も。ばらばらに始まったギターの音と抑えた声が、重なり合ってふっと浮いて上っていくような、あの瞬間も。
全部、今もどうしようもなく覚えている。
それを、いったいどこまで、どうやって忘れればいいっていうのだろう?
「なによ、尚、どうしたの?」
「ごめん、なんでもない」
言いながら、ふと、郁に聞いてみたくなった。
「なあ、郁はどうやって忘れるんだ?」
「はあ?そんなん時間がたてばみんな忘れちゃうし。覚えていたくない事なんて、最初から覚えてないしさあ」
郁が眉をひそめる。
「なんか、尚、ヘン。卒業式だからって浸ってんの?そういうの、キライ」
「関係ないよ」
……そうだ、関係ないんだ。卒業式だろうが入学式だろうが、なんだろうが。
そんな中、どこかでいつも歌がながれていた気がする。
例えば、学校からの帰り道なんとなく空を見上げた時、あるいは眠気に負けそうになりながら窓から外を見た授業中に、視界に入ったバックネットのその向こうから、歌を聞いた気がした。美しいあの人の面影とともに、それを聞いた。
覚えているんだ。
彼女の声も、微笑を浮かべた横顔も、俺じゃないどこかを見ていたあの瞳も。ばらばらに始まったギターの音と抑えた声が、重なり合ってふっと浮いて上っていくような、あの瞬間も。
全部、今もどうしようもなく覚えている。
それを、いったいどこまで、どうやって忘れればいいっていうのだろう?
「なによ、尚、どうしたの?」
「ごめん、なんでもない」
言いながら、ふと、郁に聞いてみたくなった。
「なあ、郁はどうやって忘れるんだ?」
「はあ?そんなん時間がたてばみんな忘れちゃうし。覚えていたくない事なんて、最初から覚えてないしさあ」
郁が眉をひそめる。
「なんか、尚、ヘン。卒業式だからって浸ってんの?そういうの、キライ」
「関係ないよ」
……そうだ、関係ないんだ。卒業式だろうが入学式だろうが、なんだろうが。