転生人魚姫はごはんが食べたい!
「貴女もマリーナ姉さんも、本当に人魚に戻れると信じているのね」

「ええ。女神様は自分を裏切った人間がお嫌いでしょう? 許されるためには何が必要か、少し考えればわかることですわ。もちろんただの人間ではいけないのよ。女神様を最初に裏切った人間の子孫でなければ意味がないわ」

 つまり、王族ということ? 理にはかなっていると思うけど、私は認められないやり方ね。

「中でもこの方は特別な存在。人と人魚の間に生まれた王族ですもの」

 海の魔女は驚く私に容赦なく語り続けた。旦那様が隠していたはずの秘密を呆気なくばらしてしまう。

「どうかしら、女神様も喜んでくれると思うでしょう? それに王子様はね、ご自分の罪に苦しんでいらしたの。楽になれるのなら王子様にとっても幸せなことよ」

「罪?」

「私のような占い師の言葉にも耳を傾けて下さるほど、酷くお悩みだったのね。おかげで薬も効きやすかったのかしら。王子様、貴女と結婚したことを後悔していたのよ」

「勝手なことを言わないで!」

「あら、信じたくはない? ふふっ、信じられないのかしら」

 信じるも信じないも、私が信じるのは旦那様の言葉。そのためにここまで来たんだから!

「妻が信じるべきは夫の言葉ですわ! 私は旦那様と話しに来たのです。たとえ後悔しているのだとしても、旦那様の口から聞きたいのです!」

「……そう」

 ねえ、貴女は本当に旦那様を刺すつもりなの? どうして親切に教えてくれたの? 海の魔女、貴女は一体何がしたいの? 私に何をさせたいの?
 今はなんだっていい。海の魔女が動かないのなら私が動くわ。私は旦那様を助けたい。そして旦那様の本当の気持ちが聞きたいのよ!

「旦那様。私の歌、聴きたいと言ってくれましたよね?」

 人魚にとって歌は心の証。私はこんなにもラージェス様が好きですよ。だからどうか、貴方の心に届きますように――

 私はこれからも旦那様と一緒にいたいのです。たくさん話したいことも、聞きたいこともあります。またあのお店に連れて行ってくれるんですよね? 私とした約束、忘れていませんよね? 美味しい物、たくさん食べさせてくれるんですよね!? 
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