転生人魚姫はごはんが食べたい!
この辺りの海域は深く流れが早いため人間たちからは危険視されている。そのため私は人目を忍び、時折この美しい人間の城を眺めに訪れていた。
確かに海の世界は美しいけれどね。海ばかり見ていると飽きるんです。たまには建築物が恋しくなるんです!
誰が住んでいるのかも知らないけれど、見晴らしのいい丘の上、その最上階ともなればどれほどの絶景が待っているのだろう。そんなことを考えるのが楽しみだった。
さらに回り込めば人気のない岩場へと辿り着き、奥まったところにはひっそりとした洞窟がある。遠く離れた海から様子を窺うと、入口にはシンプルな紺色のワンピースを来た女性が立っていた。ぴんと背筋を伸ばし、立ち姿の美しい人だ。
その姿がラージェス様ではないことに朝早くから呼び立てたことを申し訳なく思いながら、私は海に潜り水中から洞窟を目指した。
この洞窟、実は海と繋がっているのよ。洞窟内は空洞になっていて、空気もあるわ。レイシーにはああ言ったけれど、もしもラージェス様が悪い人だったら困るもの。いつでも逃げ出せる用意はしておかないとね。
備えあれば憂いなし。私は慎重に水面の様子を探った。
洞窟内は薄暗く、こちらから外の様子が見えていないように、入口からも中の様子は見えないらしい。水位は低く、人が立って歩くには十分な空間が広がっている。
そんな洞窟内には取り残されたように置かれたカゴが一つ。中には女性用の衣服と、横には靴が置かれていた。
ラージェス様が正しく約束を守ってくれたことに安堵すると同時に、後戻りは出来ないという緊張が生まれる。
これでもう、後戻り出来ない。
人魚から人間へ――
魔法のような変身はほんの一瞬だ。海から這い上がる頃には鱗で覆われていた足は人間と同じものに変わっている。本来私たちは望めばいくらでも歩き回ることが出来る。もちろんその逆も、人魚に戻ることさえも自由だ。
二本の足で地面に立つと、久しぶりの感覚に身体は驚いていた。親切なことにカゴにはタオルまで用意されていて、私は懐かしい人間の服に袖を通す。慣れない作りの服ではあるけれど、一人でも着られような簡単な構造でほっとしていた。
そうして袖を通し、靴を履いたところで疑問に思う。
着こなしって、これでいいのかしら? ああ、迎えの人に聞いてみればいいのよね!
確かに海の世界は美しいけれどね。海ばかり見ていると飽きるんです。たまには建築物が恋しくなるんです!
誰が住んでいるのかも知らないけれど、見晴らしのいい丘の上、その最上階ともなればどれほどの絶景が待っているのだろう。そんなことを考えるのが楽しみだった。
さらに回り込めば人気のない岩場へと辿り着き、奥まったところにはひっそりとした洞窟がある。遠く離れた海から様子を窺うと、入口にはシンプルな紺色のワンピースを来た女性が立っていた。ぴんと背筋を伸ばし、立ち姿の美しい人だ。
その姿がラージェス様ではないことに朝早くから呼び立てたことを申し訳なく思いながら、私は海に潜り水中から洞窟を目指した。
この洞窟、実は海と繋がっているのよ。洞窟内は空洞になっていて、空気もあるわ。レイシーにはああ言ったけれど、もしもラージェス様が悪い人だったら困るもの。いつでも逃げ出せる用意はしておかないとね。
備えあれば憂いなし。私は慎重に水面の様子を探った。
洞窟内は薄暗く、こちらから外の様子が見えていないように、入口からも中の様子は見えないらしい。水位は低く、人が立って歩くには十分な空間が広がっている。
そんな洞窟内には取り残されたように置かれたカゴが一つ。中には女性用の衣服と、横には靴が置かれていた。
ラージェス様が正しく約束を守ってくれたことに安堵すると同時に、後戻りは出来ないという緊張が生まれる。
これでもう、後戻り出来ない。
人魚から人間へ――
魔法のような変身はほんの一瞬だ。海から這い上がる頃には鱗で覆われていた足は人間と同じものに変わっている。本来私たちは望めばいくらでも歩き回ることが出来る。もちろんその逆も、人魚に戻ることさえも自由だ。
二本の足で地面に立つと、久しぶりの感覚に身体は驚いていた。親切なことにカゴにはタオルまで用意されていて、私は懐かしい人間の服に袖を通す。慣れない作りの服ではあるけれど、一人でも着られような簡単な構造でほっとしていた。
そうして袖を通し、靴を履いたところで疑問に思う。
着こなしって、これでいいのかしら? ああ、迎えの人に聞いてみればいいのよね!