転生人魚姫はごはんが食べたい!
「おっしゃられる通りです。奥様、この城で働く使用人は大きく分けて二通りの人間がいるのですよ」

「二通り?」

「はい。自ら志願し旦那様について来た者と、旦那様がこの地で雇用した者との二者がおります。前者は比較的年長の使用人と捉えていただいて構いません。みな旦那様が幼いことからそばで成長を見守ってまいりました。後者は年若い者がほとんどで、ニナも近隣の村から旦那様が採用されたのです。わたくしはあの子に経験を積ませ、ゆくゆくはわたくしの後継となるべく育てたいと考えております」

「それと私の専属とどういう関係が?」

「奥様はなんと申しますか……上に立つ者の、風格のようなものを感じさせる方です。そしてそれこそが今のニナには足りないものなのです。あの子は、優しいのは良いことですが少々大人し過ぎます。このままでは人の上に立ちつような役目など、とても務まらないでしょう。ですから奥様のそばで学ばせてやってはもらえませんでしょうか」

「期待されても私に教えられるようなことはないと思うわ」

 職場では後輩の指導もしたことはあるけれど、イデットさんが求めているのはそういうことではないのよね。

 とても自分に教えられることがあるとは思えない。

「奥様。わたくしはこれまで旦那様が何人もの人間を雇用する場面を見てまいりました。ですが旦那様が伴侶を選ばれたのはこれが初めてのこと。あの方が自身を持って選ばれた人であればニナも学ぶことは多いはずです」

「イデットさん……それちっともフォローになってませんよね!? 奥様選ぶのが初めてなのは普通のことですよね!?」

 無言で笑顔を貼り付けるの止めてもらっていいですか!?
 
 けれど私は考えを改める。友達の一人もいない場所で暮らすのだから、年の近い女の子がそばにいてくれるのは有り難いことだ。

「あの子、随時と若いようだけれど、年はいくつなのかしら?」

「十五と記憶しております」

 これから人間として生きるにあたって私にも足りないことは多い。ならばこれから二人で学び合うのも良いと考えたのだ。
 そう答えるとイデットさんは喜んでくれる。ほどなくして戻ったニナに今度こそ私の世話を託し、イデットさんは彼女本来の仕事へと戻っていった。これだけ広い城であれば統括の仕事も大変だろう。最後に先ほどの話は二人だけの秘密だと囁いていく。
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