転生人魚姫はごはんが食べたい!
 旦那様の判断は正しい。だから私は素直に感謝を告げた。

「他に何か困ったことや望みはあるか? 俺で叶えられることならなんでも言ってくれ。遠慮とかするなよ?」

「遠慮というか、申し訳ないくらいの好待遇ですもの」

「お前はもう立派なこの城の女主だからな。遠慮するようなことは一つもないだろ」

「旦那様ったら……そこまで警戒いただかなくても私たち約束を守りますわ。私には勿体ないほどの待遇だったと、仲間たちにもそう報告しますからご安心下さい。私たちは形だけの夫婦、旦那様がそこまで気を配る必要はないのですから」

 笑顔を添えて伝えると、何故か旦那様は盛大に立ち上がり、テーブルから身を乗り出した。

「ちょっと待て。誰と誰が形だけだって?」
 
 旦那様の声は低く、纏う空気も険悪だ。
 
 ニナが席を外したからって私の口からそこまで言わせるつもりなのかしら。わかっていると言ったのに、随分と意地が悪い人なのね。それとももっとしっかり自覚しろということ?

 いくら考えても悪趣味だという結論しか浮かばない。

「私と旦那様がでしょう。私、物わかりはいい方なのです。三食寝床さえいただければ第何夫人だろうと文句はありません」

「その第なんとか夫人てのは?」

「旦那様はいずれ私の他に何人もの美しい奥様を迎える予定なのでしょう? だって王子様ですし」

「だってってなんだよ! どっから湧いたその歪んだ王子像!?」

「創作知識ですけれど何か間違っていたかしら?」

「間違いまくりだってのっ! 俺の妻はエスティだけだ」

「あ、もしかして私を第一夫人にしないといけない決まりがありました? それは失礼しました。では地位だけはいただいておきますね。お役目はそっと譲っておきますから、安心なさいませ!」

「いや誰にだよ!」

「未来の正妃様に」
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