転生人魚姫はごはんが食べたい!
「ちょっ、ちょっとニナ! あ、あれ、あれって、あの人が食べているの、イカの串焼き!?」

 確認を取りつつも私はすでに確信していた。イカのフォルムは特徴的だ。それを串に刺し、こんがりと表面を焼いたもの。見間違えるはずがないと私の記憶が訴えている。

「なんて美味しそうなものを売っているのよ!」

 私は興奮気味にニナの腕をひっぱった。そんな私よりも年下のニナの方がよほど大人っぽく見えただろう。

「この辺りには屋台も多いですからね」

「そうなの!?」

「急ぐ人も多いので、手軽に食べられる料理は人気なんです」

「後学のためにも堪能して帰らないといけないわね!」

「ふふっ、何から召し上がりますか?」

 広い通りに差し掛かると左右共に屋台がひしめき合っている。品揃えを目で追うと、ニナの言う通り手軽に食べられるものが多いという印象だ。

「イカの串焼き、買ってきましょうか?」

「そうね……」

 私は歩きながら真剣に屋台の顔ぶれを眺めた。
 串に刺さった肉やソーセージはこんがりと焼き上げられ、数種類の鍋に汲み分けられたスープ。魚を串に刺して丸々と焼き上げた店もある。片手でも食べられそうなパンに麺類、カットされたフルーツにアルコール。それにデザートの類……

 物凄く迷うっ!!

 そして自らの胃袋と熱い議論を交わした結果。

「イカも物凄く食べたいけれど、まずはスープから攻めることにするわ! さあニナ、貴女のお勧めはどの店かしら!?」

「こちらです!」

 さすが地元住民。私が案内された屋台には複数の大鍋が待ち構えていた。
 透明な液体に刻んだ野菜と肉団子を浮かべたもの。こってりとした脂っぽさを感じる茶色い液体。カレーのようなとろみを持つ鍋と、選択肢は多い。
 そんな中でも私の視線を惹きつけて止まないのが赤い液体のスープだった。少し辛そうな色ではあるが、ぴりっと辛そうな香りが心を掴んで離さない。
 そばに用意されているベンチにニナと並んで座り、食事をとることにする。
 そこで問題が一つ。スープとにらめっこする私の懸念をニナは正確に言い当てた。

「奥様、そう気をはらなくても大丈夫ですよ。見てください!」

 ニナが促す先には豪快にスープをすする子どもたちがいて、微笑ましい気持ちになった。

「ここではあれが普通なんです。自由に美味しく食べること、それが一番なんですよ」
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