転生人魚姫はごはんが食べたい!
 可愛らしくも主成分は肉で構成されているそれを、一つずつ食材について確認していくと、前世で使われていたものと変わらないようで安心する。

「どうやら私たちはとても運がいいようね。これもかじっていいのかしら?」

「もちろんです。イデット様は禁止されるかもしれませんけど、私は奥様の味方ですよ」

「ニナを選んで正解だったわね。いただきます!」

 我慢出来ずにかぶりついたトマトが口の中で弾け、甘みが広がる。
 こんがりと焼き色のついたベーコンはおそらく塩コショウで味をつけ焼いたもの。食べやすく切り分けられてはいるが、ボリュームもたっぷりだ。イモは噛むとほろりと崩れる絶妙な茹で加減。もう一度ベーコンを堪能し、最後に甘いトマトを味わう。

「ごちそうさまでした」

「どうでしたか?」

「人間て幸せね」

「奥様?」

「こんなに美味しい食べ歩きが出来るなんて幸せだと思ったの!」

 率直な感想を伝えるとニナは喜んでくれる。自分の生まれ育った町が褒められたことが嬉しいそうだ。

「次は何を召し上がりますか?」

「そうね……。ニナが良ければ、もう少し散策してみない? 食後の運動も兼ねて。私、こんな風に賑やかな町を歩くなんて久しぶりで、楽しくなってきてしまったわ」

「わかりました! 奥様は、どこか行ってみたいお店はありますか? 好きな物や、興味のある物とか、私も奥様のことが知りたいです」

「私が意見を出すと全部食べ物のお店になってしまうと思うのよね。ニナたちは、年頃の女の子はどういった場所に行くのが好きなの?」

「そうですね……人気のカフェや、可愛い雑貨のお店を見て回ったりしますよ。あ、広場の方に行ってみませんか!? 綺麗な花時計があるんです。それに最近、人気の占い師がいるらしいんですよ! 運が良ければ見つかるらしいんですけど、謎めいた雰囲気もあって、仕事仲間の間でも噂になっているんです」

「今日の私たちは運が良いみたいだし、もしかしたら見つかるかもしれないわね」

 ニナの女子力の高い提案のおかげで退屈することはないだろう。楽しみだと告げて私たちは広場を目指した。友人と並んでの町歩き。それは仕事とお店巡りばかりしていた私にとっては久しぶりの感覚で、とても心がわくわくするものだった。
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