転生人魚姫はごはんが食べたい!
「占いは一人ずつよ。まずはそちらのお嬢さんから」

「わ、私ですか!?」

 指名されたニナは驚いて私の顔を見た。
 
「そうよ。さあ入って」

 占い師は入口の布をまくると中に入るよう促す。

「いえ私は、奥様を置いて先にだなんて!」

「ニナ、行っていらっしゃい。おそらくこういったことには閃きが大切なのよ。この方が先に占いたいと言うのなら直感に従うべきだわ」

「でも……」

「私はこの辺りを見ているから大丈夫よ。せっかくの機会なのでしょう? 私はニナにも今日という日を楽しんでもらいたいのよ」

 そう告げるとニナは申し訳なさそうに振り返りながらもテントの中に消えていった。

 その姿が消えてから数十分が経ってのこと。ニナは笑顔を浮かべて戻ってきた。その表情だけで彼女の結果は手に取るようにわかる。

「随分といい結果のようね」

「はい! 仕事は上手くいくし、これから良いことがあるそうです! 次は奥様の番ですよ。中に入るようにと言われています」

「そう。なら私も少しだけ行ってくるわね」

 入口を潜ると中は予想以上の暗さだった。足元を照らすためのランプは薄暗く、占い師の姿はぼんやりと闇に浮かび上がるように見える。とはいえ私の目は人間のそれよりも闇に強い。深海の闇はこんなものではなかったと、いつの間にか明るい世界に慣れてしまったことを思い知らされた。

「どうぞ。お座りになって」

 促され、私はテーブルを挟んで向かいの席に座る。丸いテーブルには大きな水晶玉が置かれていて、いかにも占い師といった演出だった。

「よろしくね。エスティーナさん」

 名前を言い当てられたことには少なからず動揺する。けれど考えてもみればニナから聞いたのだろうと疑問は解決した。そんな私の態度がお気に召さなかったのか、彼女はわざとらしくため息を吐いた。

「そう……貴女はあのお嬢さんと違ってあまり占いには興味がないのね」

 私、そんなにつまらなそうな顔をしているのかしら……もしかして、どうして名前を!? とか、驚いた方が良かった?

「私、そんなにつまらなそうに見えます?」

 正直に聞くと占い師は口元を手で覆い上品に笑う。

「いいえ。つまらなそうというより、運命は自分で切り開くという顔かしら。私、無理に連れこんでしまったのね」
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