転生人魚姫はごはんが食べたい!
「ほら、一緒に帰ろうぜ」
旦那様が手を差し出す。態度は堂々としているけれど、差し出された手は妙に淋しそうで、私は思わずその手を握りしめていた。
「ん?」
旦那様が首を傾けて私を見つめる。
「何か、ありましたか? 何か……心配事でも?」
旦那様は問いかけに躊躇う。言葉に悩み、迷っているようだった。それでも辛抱強く待っていると最後には旦那様もきちんと想いを言葉にしてくれた。
「……そうだよ。お前がちゃんと戻って来るか、心配してた。こんなことを言うのはお前のことを信用していないみたいで悪いんだが、やっぱり不安だったよ。置いて行かれたらどうしようってな」
「置いていくわけ、ないじゃないですか……」
私が不安を抱えていたように、旦那様にも不安はあったのですね。
「心配は無用ですわ。私の帰る場所は、旦那様のところなのですから」
「それ、いいな」
旦那様は嬉しそうに私の手を握った。
「俺も海の底まで付いて行けたら良かったのにな。そしたらお前の両親にも挨拶出来ただろ?」
人間と人魚。私たちの取引は成立したけれど、いきなり両者が手を取り合うことは難しい。そもそも私たちは同じ場所で暮らすことが出来ないわけで。人間である旦那様が海の国に行くことが叶わないように、私たちだって陸には遊びにさえも行けない。お互いの間にある溝が埋まるには時間が必要だ。
つまり旦那様が私の家族に会える可能性は今のところ限りなく絶望的。あまりにも残念そうに呟くので私は励ますように明るく声を出す。
「気にする必要はありませんわ。父は気難しいのです。旦那様、たくさん小言を言われてしまいますよ?」
「大切な娘をもらったんだ。覚悟してる」
「私だって旦那様のご両親に挨拶をしていないのですから、きっと礼儀知らずと思われているに、決まって……」
言いながら、さあっと血の気が引いていた。
まさか、まさかよね?
「あの、まさかとは思いますけれど。さすがにご両親には結婚の報告、していますよね?」
旦那様が手を差し出す。態度は堂々としているけれど、差し出された手は妙に淋しそうで、私は思わずその手を握りしめていた。
「ん?」
旦那様が首を傾けて私を見つめる。
「何か、ありましたか? 何か……心配事でも?」
旦那様は問いかけに躊躇う。言葉に悩み、迷っているようだった。それでも辛抱強く待っていると最後には旦那様もきちんと想いを言葉にしてくれた。
「……そうだよ。お前がちゃんと戻って来るか、心配してた。こんなことを言うのはお前のことを信用していないみたいで悪いんだが、やっぱり不安だったよ。置いて行かれたらどうしようってな」
「置いていくわけ、ないじゃないですか……」
私が不安を抱えていたように、旦那様にも不安はあったのですね。
「心配は無用ですわ。私の帰る場所は、旦那様のところなのですから」
「それ、いいな」
旦那様は嬉しそうに私の手を握った。
「俺も海の底まで付いて行けたら良かったのにな。そしたらお前の両親にも挨拶出来ただろ?」
人間と人魚。私たちの取引は成立したけれど、いきなり両者が手を取り合うことは難しい。そもそも私たちは同じ場所で暮らすことが出来ないわけで。人間である旦那様が海の国に行くことが叶わないように、私たちだって陸には遊びにさえも行けない。お互いの間にある溝が埋まるには時間が必要だ。
つまり旦那様が私の家族に会える可能性は今のところ限りなく絶望的。あまりにも残念そうに呟くので私は励ますように明るく声を出す。
「気にする必要はありませんわ。父は気難しいのです。旦那様、たくさん小言を言われてしまいますよ?」
「大切な娘をもらったんだ。覚悟してる」
「私だって旦那様のご両親に挨拶をしていないのですから、きっと礼儀知らずと思われているに、決まって……」
言いながら、さあっと血の気が引いていた。
まさか、まさかよね?
「あの、まさかとは思いますけれど。さすがにご両親には結婚の報告、していますよね?」