転生人魚姫はごはんが食べたい!
 などと乙女にあるまじきことを考えているとは知りもしない伯爵だ。私が宝石に夢中になっていることを確かめると、いよいよ本題へと移る。

「ところでエスティーナ様。少しばかりお願いしたいことがあるのですが……」

「何かしら?」

「実は、ラージェス様にお伝えいただきたいことがあるのです」

「伯爵様が? 私もあの人には言いたいことがたくさんあるの。良ければ一緒に話してあげてもいいわ。あの人、私には逆らえないもの」

 ふふっと精一杯の悪そうな笑みを浮かべる。こういう時は、影を付けるといいのよね。私は照明を駆使して振り返った。

「エスティーナ様は、ラージェス様が人魚を保護しようと活動されていることをご存じですかな?」

「いいえ。私、あの人が何をしているかなんて興味ありませんわ。旦那様ったら、随分忙しくしていたけれど、そんなことをしているのね」

「そうなのですよ。以前よりあの方は人魚の味方をしていたのですが、この度急に口うるさくなられまして……人魚を捕らえることは罪だとおっしゃるのです。そこでエスティーナ様に口添えを頂きたいのですよ」

「旦那様に考えを改めてほしいのね?」

「私と同じ、美しい物を愛していらっしゃるエスティーナ様ならお分かりいただけませんかな。人魚の美しさを」

「人魚?」

「ご存じありませんか? 彼らは妖しく輝く黄金の瞳に、我々を魅了するような歌声を持つのです。そして永遠に老いることはない。まるで芸術のように美しいとは思いませんかな?」

「素敵っ! 伯爵はご覧になったことが? まさか……囲っていますの?」

「いえいえ、とんでもない!」

 踏み込もうとすると伯爵は慌てて否定する。私の信頼はそこまでの域には達していないらしい。用心深いのはいいことだけれど、話し相手としては面倒だ。

「ラージェス様が禁じられていますからな。あの方を敵に回すような真似は出来ませんよ」

「それは残念ね。私も見てみたかったのだけど……」

「ではご協力頂けましたらその時は、とだけお伝えしておきましょう」

 それって、もうほとんど黒じゃない!?

 きっとこの人は人魚に近い存在。手に入れる算段があるのか、あるいは手中に治めているからこその発言だと思う。

「そうねえ、どうしようかしら……」
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