My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5

 私はもう一度謝罪する。でもリディアンちゃんはううんと首を振った。

「それより、びっくりしたでしょ?」
「え?」
「うちの兄貴のこと」
「あぁ……」

 リディアンちゃんはもう大分上の方に見えるグリスノートの背中を見つめ、さも困ったように言った。

「まったく、グレイスのことになるといつもああでね。恥ずかしいったらないわ」

 そして彼女の視線が今はラグの頭に乗っているブゥに移る。

「その子だって、全然凶暴そうには見えないのに。本当にごめんなさいね」
「ハハ、でもグレイスの歌声は本当に綺麗だし、お兄さんの気持ちわからないでもないかも」

 私もグリスノートの後ろ姿を見上げながら言う。

「それに、海賊の頭なんて凄いね。まだ若いのに」

(グレイスや歌のことになると、確かにちょっと怖いけど……)

 と、リディアンちゃんが瞳を大きくして私を見ていることに気が付いた。

「え?」
「……カノン、あなたって今フリー?」
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