My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5

14.海賊団の長


 砂浜に向かって伸びるこれまた急な階段を慎重に下りていくと、その途中にはリディの家と同様岩壁に貼り付いたような家々がびっしりと並んでいた。中には突き出た岩を屋根のように利用している家や、その逆で不安定な岩場に建ち今にも崩れ落ちそうな危なっかしい家もある。

 それらが全て海賊たちの住居になっているらしく、リディたちはこの入り江全体を“アジト”と呼んでいるようだ。
 片側の岩山がもう片方の岩山の先端を覆うような形で入り江を作っているお蔭で、外海から見ただけではこんな場所があるなんてまず気付かれないだろう。

(……それにしても、視線が気になるなぁ)

 階段を下りている間中ずっと、私たち一行はその家々から覗くたくさんの遠慮のない目にじろじろと見られていた。
 気になったのは、それらが部外者への警戒や敵意のそれではなく、好奇の目だったことだ。中にはニヤニヤと笑うようなものもあって、私は男装した当初の目的を思い出していた。
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