My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5

(この格好のままで良かったかも……)

 その視線を見て見ぬふりをしながらグリスノートの後を追っていくと、結局砂浜まで下りてしまった。
 下りとは言え脚はもうパンパンで、腿に手を着きまたもはぁはぁと息を吐いていると、そこでグリスノートが振り返った。

「長の前に、グレイスに会ってもらうからな」
「あぁ。わかっている」

 セリーンが頷くと、彼は更に船へと続く桟橋へと向かった。

(ってことは、グレイスはまだ船の中にいるんだ)

 てっきりこのアジトのどこかにあるグリスノートの家にいるのかと思ったが、そういえばリディの家に彼の部屋があったことを思い出す。全然、帰っていないようだったけれど。

 彼について桟橋を渡りながら、まさかまた乗ることになるとは思わなかった海賊船を見上げ、その大きさに改めて圧倒される。青空よりも近くにあの海賊らしくないスカイブルーの旗が静かにはためいていた。
< 132 / 280 >

この作品をシェア

pagetop