My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5

 と、セリーンは彼の前に静かに進み出ると膝をつき、優しい声音で言った。

「謝る必要はない、オルタード。私はこうして生き延びた。あのとき、私たちを懸命に守ろうとしてくれたお前のお蔭だ。だから生き恥などと言わないでくれ。私はお前が生きていてくれて心底嬉しいんだ」
「セリーヌお嬢様……」

 オルタードはゆっくりと顔を上げ綺麗に微笑むセリーンを見ると感極まるようにもう一度深く頭を垂れた。


「セリーヌ・フィッツジェラルド。それが私の本当の名でな」

 まだ興奮した様子のオルタードさんをリディが支えながら船長室のベッドに座らせている間、セリーンが小さな声で教えてくれた。

「俺には何を話しているのかさっぱりだったけどな」

 ラグがぼそっと呟くのを聞いて気づく。
 私には普段と変わらない言葉に聞こえたけれど、きっと先ほどふたりは故郷の言葉で会話していたのだろう。
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