My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5

「えっと、オルタードさんはセリーンの……」
「ああ、オルタードは我が家の執事だったんだ」
「執事!」
「執事!?」

 私の声とリディの声が被った。彼女も知らなかったみたいだ。
 確かに彼の今の姿は執事のイメージとは大分かけ離れているけれど。

(セリーン、本当にお嬢様だったんだ)

 驚きはしたが意外とは思わなかった。むしろストンと腑に落ちた気がした。
 彼女はいつだって美しく凛としていて、どこか気品があって、どんな時でも堂々としていた。――たまに壊れることもあるけれど。

 ソレムニス宮殿の庭園で花を愛でていたセリーン。どこかの国の王女様みたいだと思ったけれど、きっとあれが本来の彼女の姿。故郷を奪われさえしなければ、きっと今でも彼女は“セリーヌお嬢様”だったのだ。

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