My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5

20.頭の嫁


 海賊の宴が始まってもう一時間くらいは経過しただろうか。楽しそうな喧騒は一向におさまる気配がなく、むしろ時間が経つにつれてどんどん賑やかさを増していた。

 身体の異変に気がついたのはそんな頃だった。

(顔が熱い……それに、なんかふわふわする)

 先ほどから様子を窺っているグリスノートが視界の中でゆらゆらと揺れている。
 でも気分は悪くない。むしろ頗る良いくらいで、許されるのならこの場で大きな声で歌い出したいくらいだ。

「そろそろ行くか」
「うん!」

 ラグが立ち上がるのを見て、いよいよだと私も立ち上がる。その瞬間ぐらんと脳が揺れた気がしてテーブルに手をついてしまった。

「カノン、どうした?」
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