クール系おネエさまに溺愛されてますっ!
「ごめんなさいね、結構汚いでしょ」


「そんなこと、ないです」


バニラの香水だろうか、いい匂いがする。

本人は汚いと言っているけど私の部屋よりずっと綺麗。

ついキョロキョロと辺りを眺めてしまうとクスクス笑い声が聞こえてきた。


「っあ、ごめんなさい…」


「いいのよ、ささ、座って」


勧められた座椅子に私は恐る恐る座った。

凄い、今好きな人の家にいる。

なんて展開なんだろう。


「お茶淹れるわね、紅茶は平気?」


「大丈夫です」


「了解。あ、その間にご両親に連絡するのよ?」


「分かりました」


そう言って笹原さんはパタパタキッチンの方へ向かっていった。

はぁ。

これからどうしよう。

とりあえず言われた通りにブレザーのポケットの中からスマホを取り出し、親に連絡を入れた。

これで良し。

ただ、これって聞いていいのかな。

一気にお近づきに慣れた喜びと興奮で忘れてたけど笹原さん、自分のことアタシって呼んでたよね…?

その他にも女性っぽいっていうか、なんというか…。


「なぁに、考え事?」


「っ!!」


「やだ、そんなびっくりする?」


いつの間にか紅茶のカップとポット、お砂糖が乗ったトレーを持った笹原さんが私の顔を覗き込んでいた。

ち、近い。近いよ。

ドキドキして、この音が聞こえちゃったらどうしよう。


「…あぁ、そっか、この喋り方気になるわよね」


ふむ、と指を顎に当てて笹原さんは考え込む仕草をした。

そっと私から離れると、紅茶のポットを揺らしてカップにセピア色の液体を流し込む。

私はその光景を眺めながら意を決して聞いてみることにした。




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