はやく俺のモノになればいいのに
どうして、ちゃんと伝えられなかったんだろう。


あのときお兄さんから

『急がなきゃ』って言われたのは


あのままクレーンゲームのアームを動かさなきゃ、そのうち強制的に動いて失敗してしまうからだったのだと今ならわかる。


「『ありがとうございました。私と付き合って下さい』って言う?」
「もう、なんでもかんでも恋愛に繋げないで……!」
「んー、でもさぁ」


実柑の口角がキュッとあがる。


「さっきからそのぬいぐるみ見つめるモモの顔は完全に恋する乙女だよ?」


ありえないよ。


「二度と会うことない相手に恋してどうするの」
「どうしようもないのにしちゃうのもまた、恋だから」
「そういうものなの?」
「手がかりないのー? その場所が彼のテリトリーならまた会える可能性あるよ」


また会えるかも、なんて期待すると、どこかうわついてしまう自分がいた。


「ゲーセンなんて、いつもだいたい同じところ利用するものでしょ?」
「……たしかに」
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