はやく俺のモノになればいいのに
「恋に落ちるのなんてねぇ。1秒あれば十分だよ?」


ニッと口角をあげる実柑。


くるんとしたまつ毛は今日も絶好調に上を向いていて、オレンジがかった明るめの茶髪はダメージなんて一切受けてなさそうなくらいサラサラだ。


私もメイクや毛染めをしてみたいけれど、親がなんていうか。


多分、まだ早いと言って止めてくる。


「高校生? 同じ学校?」
「そんなの聞く余裕ないよ。お礼すら言えてなくて心残りなのに。でも年上だとは思う……」


――ユキ、行くぞ。


「あ」
「なになに? なにか思い出した!?」
「名前なら、聞いたかも」
「それは大きな情報源じゃない?」
「ユキって。呼ばれてたような気がする」


ピッタリだな、と思う。

あの儚げな声にユキって名前は。


「ユキかぁ。下の名前かな。だとしたらユキト、とか。ユキナリとか。まんまユキくんとか?」


実柑の推理が始まった。

うん、どれもカッコイイ。


「それだけで人探しなんて、無理だよね」
「あー! やっぱり気になってるんだ! 会いたいんだ!?」
「……っ、お礼が言いたいの!」
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