はやく俺のモノになればいいのに
私はユキさんのやることなすことが優しい気がしてならない。
普通だって、思えない。
全部が特別に感じる。
優しい先輩から――イジワルだけど甘い"オトコ"に豹変するユキさんに、心を鷲掴みにされる。
「モモって子。このクラス?」
教室の入り口から中を覗き込んでいるのは、知らない女子だ。
「いるんでしょ。出てきなよ」
おそるおそる椅子を引こうとしたとき、
「なにか用ですか」
実柑が先に立ち上がった。
周りの子たちは、なにも言わずに
ただそのやり取りを眺めている。
「あんたがモモ?」
「だったらなんですか」
モモはその子じゃないよとツッコミを入れるクラスメイトは、いない。
「顔貸しな」