はやく俺のモノになればいいのに


私はユキさんのやることなすことが優しい気がしてならない。

普通だって、思えない。

全部が特別に感じる。


優しい先輩から――イジワルだけど甘い"オトコ"に豹変するユキさんに、心を鷲掴みにされる。


「モモって子。このクラス?」


教室の入り口から中を覗き込んでいるのは、知らない女子だ。


「いるんでしょ。出てきなよ」


おそるおそる椅子を引こうとしたとき、


「なにか用ですか」


実柑が先に立ち上がった。


周りの子たちは、なにも言わずに

ただそのやり取りを眺めている。


「あんたがモモ?」
「だったらなんですか」


モモはその子じゃないよとツッコミを入れるクラスメイトは、いない。


「顔貸しな」
< 135 / 553 >

この作品をシェア

pagetop