はやく俺のモノになればいいのに


ユキさんが、ぽつりとつぶやいた。


イチヤくんは気にせず会話を続ける。


「校内でもてはやされて気分よくなってるか知らねえが。チョーシ乗んなよ」


ちがう。


ユキさんは、女の子からチヤホヤされることに無関心で。


仲の良い友達といても、黙ってるような人で。


なのに


こうして私を心配して保健室まで来てくれた。


「お前が桃葉にしたこと俺が知らないと思ったら大間違いだからな」


待ち合わせ場所には私よりはやく到着して


いつも車とか通る危ない方を歩いてくれて


「適当なこといって近づいて。もてあそんでんじゃねーよ」


ちがうの、イチヤくん。


ユキさんは悪い人じゃないの。


私の本気に応えないのは――応えられないのは色んな女の子と遊ぶためじゃなくて、好きな人を想っていたいから。 


カノジョにしてもらえないのは悲しいけれど


遠ざけようとしてきたユキさんに、どんな形でもいいからって、彼氏じゃなくてユキさんが欲しいってお願いしたのは、私。
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