鳴り響け、復活のソナタ
逃げる私を追いかけようと席を立った浦島先生が“アターー!!”とうめき声を上げた。
背中越しに聞いたから多分だけど、
教卓の角に小指をぶつけたと思われる。
とにかく、3年4組の教室を飛び出したそのままの勢いで、
下駄箱、校門までノンストップで駆け抜けた。
私の名前は三井キョウコ。
LJK・・ラストJKになったばかりの、
どこにでもいる平凡な・・
いや・・平凡以下かな・・。
私はずっと・・同じ場所にいる。
後ろはすぐ振り返るくせに、
前に進もうとしない。
過去を見ては顔を背けて、
未来はそもそも見ようともしない。
看護の専門学校、美大、国立、私大。
友達はみんな“夢”に向かって目標を立ててるのに、
私は・・“夢”なんて言葉、もう二度と聞きたくないぐらいの拒絶反応を起こしてる。
何て言うんだろう・・。
表現が難しいけど、
小学6年生の時に私は一度死んだんだ。
だから、それからはずっと“空っぽ”のまま生きてる。
空っぽのまま、
今日も授業を受けて、
友達とお弁当を食べて、
私を心配してくれる浦島先生に背を向けて・・空っぽのままバイト先に走っていく。