幻惑
世間知らずの私は、家賃の相場がわからない。

翼の収入も、二人の生活に いくら必要なのかさえ、知らない。
 
「ありがとう。でも俺、結花里に仕事させるの、嫌だなあ。」

翼の声は甘くなる。
 
「えー。どうして?」私が聞くと

「だって結花里が、他の男と話すの、すごく嫌だもん。」

と翼は、私の髪に唇を寄せる。
 
「フフ。翼君、ヤキモチ妬いているの。」
 
「結花里、可愛いから。絶対狙われるよ。」
 
「大丈夫。新婚ですって、ちゃんと言うもん。」


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