幻惑
「本当よ、パパ。翼君は、ちゃんと奥さんに話して、離婚届も渡してあるの。奥さんも承知しているし。ただ、仕事が忙しいから。もう少し待ってほしいって。奥さんは、そう言っているの。」


私は、必死で父に言う。
 
「それなら、彼の離婚が成立するまで、会うのを止めなさい。」

父は静かに、でも厳しい口調で言う。
 
「無理よ、そんなこと。」

私は父の言葉に驚き、手で口を覆う。


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