幻惑
「彼と奥さんの間で、そこまで話ができているなら、無理じゃないだろう。そんなに長い時間が必要なわけでもないだろう。」

諭すように言う父に、私の目から涙が溢れる。
 
「結花里が本気なら。彼と結婚して、一生一緒にいるつもりなら。そのくらいの時間、我慢できるだろう。」

私は首を振りながら
 
「いやよ。彼と離れるなんて、できない。」

と途切れ途切れに私は言う。
 
< 109 / 263 >

この作品をシェア

pagetop