幻惑
「初めて飲んだ時。ほら、結花里がお見合いした後。あの日、結花里に一目惚れしたんだ。」

と翼は言う。
 

「えー。だって、ずっと知っていたじゃない。」

私が言うと
 

「あの日まで、結花里のことは お客さんとしてしか、見ていなかったから。可愛い子だな、とは思っていたけれど。それだけだったのね。」


翼の言葉に、私は頷いて
 
「私もそうよ。」と言った。
 

「あの日、四人で飲んで 結花里、すごく思いやりのある子だって思ったの。」

翼に言われて、私は驚く。
 

「私、少し飲み過ぎたのよね、あの日。」

昔を思い出して、私が言う。
 

「結花里、みんなに気を配っていて。すごく自然に、さり気なく。俺の周りに、そういう子 いなかったから。もっと結花里を知りたいって。本気で思ったんだ。」


翼は懐かしそうに言う。
 

「そうだったかしら。無意識よ、多分。」


私は少し照れて、翼を見る。
 

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