白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集
「小百合はさ
青木って奴と付き合うことに
したんだよな?」
「……うん」
「俺よりも
そいつといたいってことだよな?」
「…………」
長い沈黙の後
溢れそうなくらいの涙をためながら
小百合が首を横に振った。
「もうこれ以上……
苦しい思いをするのは嫌なの……
初めて会った時から
龍のことが好きだったのに……
隣にいる龍は
いつも他の女の子のこと
思ってるから……」
初めて会った時から
俺が好き?
想像もしていなかった言葉に
俺の口は固まったまま。
そんな時
小百合が袖で涙を拭き
情けない俺を見かねるかのように
いつもの女王様モードで話し出した。
「龍、今のは聞かなかったことにして。
恥ずかしすぎて
自分じゃいられなくなるから。
もう5年も一緒にいるんだよ。
龍に釣り合う女の子が
私じゃないってことくらい
自分できちんとわかってるから。
龍も、失恋したから
近場で済ませようとかじゃなくてさ。
本気で好きになれる子見つけたら?
十環に頼んであげようか?
誰か紹介してあげてって」
「なんだよ、それ」
「龍の師匠がいる
忍者の里にでも行って来れば?
一緒にすいとんの術で
水の中に潜ってくれる女の子に
出会えるんじゃない?」
「は?」
「それか、お店に来る
龍目当てのお客さんでもいいじゃん」