白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集
「小百合さ、
なんでいっつもゲームの最後は
俺に勝たせてくれてたわけ?」
「別に……
勝たせてあげたことなんて、ないし」
「嘘つくなよ」
「もう、龍!
レース中に変な事言わないでよ。
また壁に、ぶつかっちゃったじゃん」
「俺、嘘つく女、
嫌いなんだけど」
小百合の耳元で
あえて不愛想な声を発した。
小百合はゲームを中断して
コントローラーを床に置いた。
「だって……
龍がゲームで勝つと……
子供みたいに無邪気に喜ぶから。
喜んでる時の龍の顔……
どうしても見たくて……」
なんだ、その理由。
俺の喜ぶ顔が見たいって。
すっげー嬉しいこと
言ってくれるじゃん。
俺の腕の中で
申し訳なさそうに
小さく丸まっている小百合。
その姿が愛おしくてたまんない。
「怖がらせるような声出して
悪かったな。
どうしても
お前の本心が聞きたくてさ」
「私のこと……嫌いになった?」
嫌いになるわけねえし。
逆に
俺への優しさが見えて
もっと大好きになったし。