白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集
テレビの前に
三角座りをした小百合を
俺は後ろから抱きしめる形で
レーススタート。
さすがに俺も心臓バクバクで
レースなんかに
集中できないんだけど。
俺に後ろから包まれながら
コントローラーを握りしめる
小百合の方が、
明らかにいつもと様子が違う。
「小百合、
コースから落ちてんじゃん」
「龍が、私のバイクに
ぶつかってきたからでしょ」
「俺がぶつかる前から
明らかに落ちてたけどな」
いくら初めてやるゲームとはいえ
いつもの小百合なら
俺なんかぜんぜん敵わないほど
ぶっちぎりゴールを決めるのに。
カーブでドリフトに失敗しまくり。
壁にはぶつかってばかり。
「あ~! もう!
またコースから外れちゃったし!」
私、ゲームに集中してます感を
醸し出して、
ごまかしているみたいだけど。
小百合も
俺に抱きしめられていることに
ドキドキしてくれているのが
すごくわかる。
俺の腕が動くたびに、
小百合の体がビクンと跳ねて。
表情は見えないけど、
耳まで真っ赤になっているから。