白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集

「今朝ね、旗振りをしてた時にね
 桃華ちゃんが私に
 話しかけに来てくれたんだよ」


「桃が?」


「そう。
 虎ちゃん。
 私が彼女だって、桃華ちゃんに
 言ってくれていたんだね。

 それがすっごく嬉しくて。
 虎ちゃんに、会いたくなっちゃった。

 それにしても桃華ちゃんって
 相変わらず美人さんだね。
 手足も細くて、すらっとしていて。
 顔も小さくて、見とれちゃったよ」


「清香。
 桃に、何か聞かれた?」


「うん。
 『なんで旗振りをしてるの?』とか
 『虎ちゃんのどこが良いの?』
 とか聞かれたよ」


「それで、俺のことを話したわけ?」


「うん。
 虎ちゃんの優しいところとか
 いつも助けてくれるところとか話したよ」


「お前さ。
 普通、彼氏の妹に
 そんな恥ずかしい話しするか?」


「え? ダメだった?」


「ダメに決まってるだろ。
 そんな話なんかされたらさ
 桃がニヤケ顔で
 お前とのことを聞いてくるじゃん。
 うざいんだよ。そういうの」


「ごめんね。
 そこまで考えてなくて……つい……」


「は~。清香。
 お前もう、帰れよ」


「え?」


「ほら、客が来たし。
 暗くなる前に、気を付けて帰れよ」



 虎ちゃんは
 普段の私には見せないような
 さわやかな笑顔で
「いらっしゃいませ」と言うと
 お客さんの方へ歩いていった。

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