白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集

 切ない声に胸が痛みだし
 その場から動けなくなった。
 


 十環先輩は、本当にずるい。


 いつも王子様みたいに
 優雅に微笑んでいるのに。


 そんな風に
 怒られて耳を垂らしたウサギみたいに
 切ない顔でシュンとされたら

 先輩を残して今すぐ帰るなんて
 できるわけないじゃないですか。




 でも意地っ張りな性格が邪魔をして
 『帰るのをやめます』なんて
 素直に言えない。



 うつむいたまま
 ドアの前で立ち尽くす私の方に
 十環先輩が歩いてきた。


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