白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集

 笑いが止まらない十環先輩を
 濁った瞳で見つめてみる。


 そんな私の変化にも気づいてもらえず
 十環先輩は
 涙を手でこすりながら笑い続けている。



 どんどん沈んでいく私の心。



 私は十環先輩向かって
 低い声を発した。


「私、帰りますね」


「え?」


「ご褒美に浮かれてた自分が
 バカみたいなので」



 笑顔なんて作れない。

 なんか今は
 この部屋にすらいたくない。


 私は立ち上がると
 部屋ドアノブに手をかけた。



 その時
 弱々しい声が耳に届き
 心が締め付けられた。


「桃ちゃん……

 お願いだから……

 帰らないで……」

           
 
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