白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集

「ムリです。ムリです。

 このシュシュだって
 ピンクでレースがついていて
 私に似合わないくらいカワイイものだし。

 ましてや……
 このベストなんて着たら……」




「桃ちゃんなら、絶対に似合うよ。

 だってバレンタインの時だって
 うすピンクのロリータワンピに
 真っ白なヘッドドレスを
 つけていたでしょ。

 すっごく可愛かったよ~」



「あれは、無理やり着せられただけで。
 普段着なんて、ダーク色ばっかりだし」


「俺のお願いでも
 聞いてくれないの?」


「ムリです」


「じゃあさ、俺の子供の頃の写真
 1冊のアルバムにしてあげるから」


「それは……欲しいけど……
 でも、絶対にダメ!

 シュシュは先輩が私のために
 作ってくれたものだからつけます。

 すっごく恥ずかしいけど。
 嬉しいからつけます。

 でも、ベストは着ませんからね」



「なんで?
 俺のベスト着るの……そんなに嫌?」


「だって、そのベストを着たら
 学校中の女子から睨まれそうだから。

 そのピンク色ベストは
 十環先輩しか着ちゃダメって
 暗黙のルールがあるのに。

 明らかにピンクが似合わない私なんかが
 なんで着てるのって、
 みんなが思うじゃないですか」


「いいじゃん。 
 俺の彼女だって言えば」


「私なんかが十環先輩の彼女だなんて
 みんなに言えるわけないじゃないですか。

 十環先輩は、なんでそんなに、
 このベストを着て欲しいんですか?」
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