触れたい指先、触れられない心



「あ、やーっと来た」




 わたしたちが校門へ着くなり、サヤカはこちらを向きなおした。
 そして、邪魔と言わんばかりにマコの方を睨んでみせた。


「……何の用?」


 さっさと話を終わらせたいわたしは、そんなサヤカを無視して話を切り出した。


「諦めたわけじゃない……って言ったわよね?」
「霞さんは迷惑してます。……もう帰ってください」

 それだけ言い残して立ち去ろうとすると、サヤカはわたしの行く手を阻むように前に出た。

「諦めるのって簡単な事じゃないの。あんたもそうでしょ?」


 諦めるのは簡単じゃない……
 その言葉はわたしの心の奥に突き刺さった。

 それを一番分かってるのは……わたしだから。


「霞はね、あたしに遠慮して婚約を破棄したの。そのあたしがこうやって未練を残してる……どういう意味か分かるわよね?」




 ――……っ?!


 霞さんはこの女に遠慮して……
 って事は、婚約破棄を承諾されてなかったら今も……


「あは、ひっどい顔。言っておくけど、もうあたしは遠慮なんてしないから」
「……っ! てめぇっ! それ以上詩音を馬鹿にしたら……!!」
「ハイハイ、もう帰りまーす。でも……また会うかもね?」


 マコがサヤカの胸ぐらを掴むと、サヤカはそれだけ言い残して立ち去って行った。


「詩音、あんな奴の戯言なんて聞く事ないからな」
「……分かってるもん」
「……はぁ、全然そうは見えねーけどな。……ほら、泣きやまねーと」

 サヤカの挑発に乗るのはよくない……サヤカの思うつぼだって分かってるけど……
 でも、なんで? 涙が止まんない……


 もう会わないって霞さんは言ってたけど、あの女は会うつもり……
 どれだけ霞さんをあの女から遠ざけても、一生会わないなんて事はできない。


 この不安はどうしたら消えるの……



< 48 / 84 >

この作品をシェア

pagetop