触れたい指先、触れられない心
「あ、やーっと来た」
わたしたちが校門へ着くなり、サヤカはこちらを向きなおした。
そして、邪魔と言わんばかりにマコの方を睨んでみせた。
「……何の用?」
さっさと話を終わらせたいわたしは、そんなサヤカを無視して話を切り出した。
「諦めたわけじゃない……って言ったわよね?」
「霞さんは迷惑してます。……もう帰ってください」
それだけ言い残して立ち去ろうとすると、サヤカはわたしの行く手を阻むように前に出た。
「諦めるのって簡単な事じゃないの。あんたもそうでしょ?」
諦めるのは簡単じゃない……
その言葉はわたしの心の奥に突き刺さった。
それを一番分かってるのは……わたしだから。
「霞はね、あたしに遠慮して婚約を破棄したの。そのあたしがこうやって未練を残してる……どういう意味か分かるわよね?」
――……っ?!
霞さんはこの女に遠慮して……
って事は、婚約破棄を承諾されてなかったら今も……
「あは、ひっどい顔。言っておくけど、もうあたしは遠慮なんてしないから」
「……っ! てめぇっ! それ以上詩音を馬鹿にしたら……!!」
「ハイハイ、もう帰りまーす。でも……また会うかもね?」
マコがサヤカの胸ぐらを掴むと、サヤカはそれだけ言い残して立ち去って行った。
「詩音、あんな奴の戯言なんて聞く事ないからな」
「……分かってるもん」
「……はぁ、全然そうは見えねーけどな。……ほら、泣きやまねーと」
サヤカの挑発に乗るのはよくない……サヤカの思うつぼだって分かってるけど……
でも、なんで? 涙が止まんない……
もう会わないって霞さんは言ってたけど、あの女は会うつもり……
どれだけ霞さんをあの女から遠ざけても、一生会わないなんて事はできない。
この不安はどうしたら消えるの……