触れたい指先、触れられない心
「ほら、来たぞ。……詩音?」
霞さんの姿が目に入ると、わたしは俯いて涙を拭った。
「霞さん!!」
何事もなかったかのように頑張って笑顔を作る。
まだこんなことでモヤモヤしてるなんてバレたくない。
「……すげーな、詩音……」
「待たせてしまってすまない。行こう」
「はいっ!」
わたしたちは並んで歩きだした。
不安な気持ちを押し殺して必死に笑顔を作る。
◆◇◆
しばらく歩くと見えてきたのは、大きな観覧車。
なんだか少し胸がチクリと痛む。
「観覧車……乗りませんか?」
「勿論、いいだろう」
フッっと微笑む霞さん。
観覧車に乗る初めては叶わなかったけど……観覧車での初めての楽しい時間はわたしがもらう。
そうやって新しく霞さんの初めてを見つけていけばいいんだ……
わたしは霞さんの手を引いて、観覧車へ向かった。
「…………」
静かな空間、向かい合わせの近い距離……
どうしよう、ドキドキして何も喋れない……
だって、霞さんの顔がこんな近くにあるんだもん。
切れ長の瞳に長い睫毛が伏せられていて……
その目に捉えられたらもう何も言えなくなる。
「どうした? 詩音」
「あ……綺麗だなって。……っ!! 違うんです、景色が!」
「そうだな、夕焼けがすぐそこに見える。このまま沈む瞬間を見届けよう」
霞さんの視線は夕日へと変わる。
わたしはその横顔に見とれたまま。
どうしよう、こんなにドキドキしたり見とれたりするのは初めてで。
自分でも一体どうしたらいいのかわからない。
「わたしと過ごしていて、霞さんは楽しいですか……?」
「ああ。だが……いや、何でもない」
霞さんは、一瞬わたしの方を見てそれからすぐに視線を逸らした。
だが……って……
楽しいけど、何か不満があるって事だよね……?
確かに思い当たる節は山ほどある。
考えてみたらわたしは出会った時から自分勝手でわがままなことばっかりで……いつも霞さんを困らせてばかりだ。
それに……
『ピリリリッ♪ピリリリッ♪』
霞さんの着信音が鳴り響いた。
「……すまない。……誰だ?」
呼び出しだったりして……だって霞さんはいつも忙しそうだし
「……用はそれだけか? もう関わらないと言ったはずだが?」
…………ッ!?
誰からの電話……?
ほら、やっぱり。
わたしはわがままで欲張りだ。