触れたい指先、触れられない心
*霞 Side*
はぁ、これでは話し合いの場を設けた意味がなくなった。
詩音はきっと気を使ったのだろう。
いつもそうだが、詩音は俺に気を使いすぎる。
……俺を信用していないのかと不安になる。
「やっとどっか行ってくれたね。あの子がいたら話したい事も話せないし」
「戯言はいい、早く話をつけよう」
「俺は詩音との将来を大切にしたい。……今更、俺に関わる理由は一つもないように思えるが」
「……あの子の事好きなの?」
「分からない」
「だったら!」
「でも、詩音の悲しむ顔や泣いているところを見たくない。笑っていてほしいんだ。……不安にさせたくはない」
好きだとかは分からない。
だが、詩音がありのままで笑っていてくれたら、それだけでいいと毎日願う。
「あたしとあの子、何が違うって言うの?」
「お前は……財力や地位を知っているからこそ俺を物にしようとしている……違うか?」
俺の一言でピクリと固まる表情。
やはりか……
俺の婚約破棄の申し出を受け入れたのも、俺が次期頭領として認められていないと分かったからだと薄々勘付いていた。
それに……
「俺の部下と……浮気をしていたのも知っていた。だから婚約破棄を申し出たんだ」
「なんで……何も言わないのよ……」
「元々愛のない結婚だった。これを浮気と呼ぶのかさえ今でもわからない。だから、俺にお前を束縛する権利はなかった」