碧花の結晶

秘密

«ルーナside»







もうすぐ私は10歳になる。





10歳になると、孤児院を出ていかないといけない。





これがこの孤児院のきまりだから。

孤児院は寄付を募ってギリギリで成り立っているので仕方ないと思うけど。





でも私はこの孤児院を出たくなかった。

シスター達は優しいし、子供達とは毎日一緒に遊んで、一緒に勉強した。

もう家族同然のこの人たちと別れるとなるとやっぱり辛い。






孤児院を出る時、いちばん困るのはこの後の進路だという。

親がいない子供は当然地位もなく、進学したくとも教会がお金を出せるはずもない。





町の商店街のどこかで雇ってもらうか、兵として雇ってもらうかと、10歳までに進路を決めるというのはなかなか難しい。





幸いにも私には魔法の才があり奨学金が貰えたため、半年後には魔法学園への入学が決まっていた。



この孤児院が始まって以来の快挙だという。








でもなんとも言えない不安が最近拭えなくなってきて、いつも落ち着かない。








そしてあと1ヶ月で孤児院を出ていくという日の夜。






孤児院に訪問者が現れた。




その時私は夕食を食べていた。


貧乏な孤児院で、決して豪華とは言えないご飯。

でも私は物心ついたときからここにいるので、苦痛ではなかったし、それが当たり前だった。





「ルーナ姉ちゃん!おかわりしたい!」



「また?最近よく食べるね…

はい、よそって来るからお皿貸して。」



「姉ちゃん」と呼ばれるけど、私達にはもちろん血の繋がりなんてない。

だけど、家族同然の存在だった。






「すみません、まだスープのおかわりあります?」





「あるよ。

またどうせササだろう?あの子最近食べ盛りだねぇ。こっちもやる気が出てくるよ。」




料理長さんは気前よく、お椀いっぱいにスープを入れてくれた。



そしてスープを受け取った時、シスターから呼ばれた。




「ルーナちゃん、あなたにお客様よ。」




「え?」




私に客?

心当たりなんて全くなかった。



私はずっとこの教会兼孤児院で暮らしてきたし、教会に通う人達が私を尋ねるならこんな夜に来ないはず。





「ごめん、これササのとこまで運んでくれません?」





「はいはい。いいよ行っといで。」





「ありがとうございます。」






疑問に思いながらも私は小さな部屋に通された。





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