桃の華〜溺愛イケメン社長〜
「いえ、お役に立てずにごめんなさい」

「急に押しかけて申し訳ない。律には会ったことを言わないでほしい」

「どうしてですか?」

2人の間に溝があるのはわかっている。
だけど、やっぱりこのままじゃ駄目な気がする。

「あいつが父親のことをどう思ってるか知ってるだろう?きっと君に会いに来たって知ったら怒るだろう」

「そんなことは…」

言いかけた私の言葉を遮るようにインターホンが鳴った。

桃田さんが迎えに来てくれたんだ。

「ちょっと待ってて下さい」

私はお父さんにそう言って、玄関のドアを開けると、やっぱり桃田さんが迎えに来てくれていた。

「華ちゃん、準備はできてる?」

「はいっ!あ、ちょっと車で待っていて下さい。すぐ行きますので」

今はまだ桃田さんとお父さんを会わせない方がいいよね。

「誰か来てるの?男物の靴があるけど」

「えっと…」

桃田さんに嘘はつきたくないけど、お父さんが来ているとは言いづらい。

「あの、すぐ行くのでちょっとだけ…」

桃田さんは私の顔をジッと見つめてくる。
絶対に桃田さんに怪しまれてるよね。

「わかったよ。車で待ってる」

そう言って、桃田さんは玄関を出て行った。

私は待たせているお父さんの元へと戻る。

「律と約束してたんだな。今日はあいつの誕生日だからね」

お父さんはちゃんと桃田さんの誕生日も覚えていて、何だか嬉しいと思った。

「気を遣わせて悪かったね」

「いえ、あの、お父さん」

帰ろうと玄関へ向かうお父さんを呼び止める。

振り返ったお父さんの姿が、桃田さんに似ていた。

「桃田さん、お父さんのこと尊敬していたって言ってました」

「そんなこと話すのか、君には」

お父さんはそう言って、玄関のドアを開けた。

そこには帰ったはずの桃田さんが立っていた。

「え、桃田さん?」

車で待っててっていったのに、どうして?
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