桃の華〜溺愛イケメン社長〜
「そんなこと言われたのは初めてだな」

そう言った桃田さんのお父さんは涙を流している。

「愛しい人に素直になれって言われたら、そうなるしかないからな」

「お前、親の前でそんなことよく言えるな」

「喜ぶ顔が見れるなら、何でも言えるけど?」

そう言った桃田さんとお父さんは笑い合っている。

私は親が早くにいなくなったけど、親子って溝があってもすぐに分かり合えて埋められるんだと思った。

「律、お前変わったな。クールで自分の考えてることなんて口に出さないやつだったのに。彼女のおかげか」

「ああ、純粋で可愛くって、俺には勿体無い人だよ」

そう言ってもらえて嬉しいけど、それはちょっと言い過ぎだと思う。

桃田さんの方が、私には勿体無いよ。

「捨てられないようになりそれから律、誕生日おめでとう」

お父さんはそう言って帰って行った。


「覚えてたんだな、俺の誕生日」

「はいっ、多分これも桃田さんへのプレゼントだと思います」

お父さんは私にって持って来てくれたけど、それは桃田さんの大好きな和菓子だった。

きっと、それを持って来たのは桃田さんに渡してくれってことだったんだと思う。

「こんな年になって親からのプレゼントが嬉しいだなんてね」

そう言った桃田さんは、またやっぱり手を口元へと持っていってる。

「桃田さんっ、遅れちゃったけど、お誕生日おめでとうございます」

「やっぱり親父のプレゼントより、華ちゃんの言葉の方が何倍も嬉しいな」

そう言って、桃田さん玄関先で私を抱きしめてきた。

「華ちゃんがいてくれなきゃ、親父と話す気にもなれなかったよ。ありがとう」

「桃田さんとお父さんが仲直りできてよかったです」

私には桃田さんのようにお金もないし、何かをしてあげたくても出来ないことがいっぱいある。

だけど、私の言葉一つで桃田さんを喜ばせされるならすごく嬉しい。



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