桃の華〜溺愛イケメン社長〜
しばらく抱き合っていた私たちはお腹が減り、桃田さんがルームサービスを頼んでくれた。

ルームサービスが来るまでの間シャワーを浴びたけど、体にいくつかアザができている。

シャワールームから出ると、桃田さんとマキノさんの話し声が聞こえてきた。

「アヤミをCMから下ろす」

えっ?
アヤミさんをCMから下ろすって、もう撮影までしてるんじゃ…。

「社長、わかってるんですか?違約金を請求されますよ?」

「承知の上だ」

違約金ってすごい額だよね。

「ま、待って下さい」
私は2人が話しているところに割って入った。

「私のせいでそんな事しないでください」

桃田さんは、私がアヤミンさんに写真のことで脅されてたから、仕返しをするつもりなんだ。

「華ちゃんのせいじゃないよ」

「でも、桃田さんの会社の為にならないですよね?」

桃田さんの仕事の邪魔だけはしたくない。

「会社の心配までしちゃって、ほんと…華ちゃんは」

「私、桃田さんが仕事が大好きなの知ってます。だから邪魔したくないです」

そう言うと、桃田さんは私の前まで来て、そっと優しく抱きしめる。

「俺たちの仲を邪魔したのもあるけど、それだけじゃないから心配しないで。会社の為にすることだから」

私の頭を撫でながらそう言ってくれるけど、何だかスッキリしないよ。

「そうですね。契約を解除した方が会社のためですね」

桃田さんだけじゃなく、マキノさんもそんな事を言い出した。

「近いうちにスキャンダル女優になるでしょうから、今のうちに縁を切った方が傷も浅くて済みますね」

昨夜、アヤミンさんがエレベーターでキスしていたことを思い出した。

「華ちゃん、そう言うことだから気にしなくていいよ」


マキノさんは部屋を出て行って、運ばれてきたルームサービスを桃田さんと一緒に食べた。

食事中、痛いほど桃田さんの視線を感じる。

「桃田さん、見過ぎです」

恥ずかしくて、美味しい食事も味がわからないよ。

「可愛いからつい見ちゃうよ」

私はこんな幸せなら時間を自分で手離そうとしていたんだね。

ほんと、馬鹿だった。


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