桃の華〜溺愛イケメン社長〜
食事を終え、ソファで桃田さんに凭れるように座っていると、お腹がいっぱいになったせいか睡魔が襲ってきた。

病院であんなに眠っていたのにな。

「華ちゃん、ベッドで寝ておいで。俺は自分の部屋に行くから」

え?桃田さんと同じ部屋じゃないんだ。
今日はずっと一緒にいられると思っていたのに。

もっと一緒にいたいな。

「桃田さんと別の部屋なんですか?」

「そんな可愛い顔でそんなこと言ったら、襲っちゃうよ」

「え?」

襲うって、その、エッチのことだよね。

心の準備はまだだけど、桃田さんにならいいって思う。

私の初めての相手は桃田さんしかいない。

「嘘だよ、冗談!襲わないから一緒に寝ようか」

「は、はい」

ちょっとホッとしたような、残念なような…。

結局、私は桃田さんの腕枕で朝までぐっすりと眠ってしまった。

朝目覚めと、桃田さんがコーヒーを入れてくれる。

「華ちゃん、おはよう」

「おはようございますっ」

朝の桃田さんは少しだけ声がかすれている。

それに、髪の毛もまだセットしていなくてサラサラだ。

一緒に朝を迎えたらこんな桃田さんを見られるんだね。


朝食を食べ、チェックアウトを済ませホテルを出た。

空港までの道のり、車の窓から沖縄の景色を眺める。

せっかく沖縄にいるのに、桃田さんと沖縄らしいこと何も出来なかったな。

そう思っていた私の心を知ってるかのように、桃田さんは“また一緒に沖縄来ようね”って言ってくれた。


飛行機に乗り離陸すると、桃田さんは眠ってしまった。

桃田さんがファーストクラスの航空券を用意してくれたため、席と席に距離があって、桃田さんの寝顔が間近で見られないのが残念だよ。

「社長、眠れなかったらしいですよ」
一緒に飛行機に乗ったマキノさんが、振り返りそう言う。

桃田さん、眠れなかったって、私のせい?
そんな事も知らずに、私だけぐっすり眠ってしまった。

「いい歳した大人が一晩中悶々として寝れないなんて、笑えますよね」

「モンモンと、ですか?」

マキノさんの言っている意味がわからず、首を傾げる。
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