桜田課長の秘密
* * *

「おはようございます!」

ニッコリ。

『辛いときこそ笑顔で過ごしなさい。
そうすれば、きっと素敵な一日になるから。』

亡くなったおばあちゃんに、そう教えてもらった。
その言葉は正しかったようで、皆さん〝素敵な距離感〟をもって挨拶を返してくれた。

目があった係長などは『お……おっはひょう!』と引きつった笑みを浮かべるので『ひょうきんおじさんですか?』と尋ねそうになったほどだ。

下手なことを言うと殺される、とでも思っているんだろうか。
露骨に怖がる社員を尻目に、窓際の自席に座る。

どうせ距離をおかれるなら、せめてハイエナ軍団からの嫌がらせも減ればいいのだけど……

パソコンを立ち上げ、起動を待っていると、

「あっ、巴ちゃん。おはよ!」

出勤して来たルミさんが、パッと顔をか輝かせて駆け寄ってきた。
昨日、給湯室で私に見捨てられたことなど、気にも止めていないようだ。

「聞いたわよー、詳しく教えて教えてっ!」

ゴシップ好きの血が沸騰しているだろう。
朝だとは思えないテンションの高さ。

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