桜田課長の秘密
「首絞めたのっ、殺そうとしたのっ? 巴ちゃんって、意外と情熱的なんだねえ」

殺しに手を染めようとした私を、情熱的と捉えるルミさんの感性って――

いや違う。

「絞めてませんし、殺そうともしてません」

「でも、警察に突き出されそうになったんでしょう?」

「いいえ、クビにはなりそうでしたけど」

「ええっ、じゃあ……」

「デマですね」

『なあんだ』とルミさんのつまらなそうな声。
同時に、張り詰めていた庶務課内の空気和らいだ。

ホッとしたように歩み寄ってきた白石課長が、資料を差し出す。

「デマだったのか。それなら江本さん、備品の経費削減案。共有ファイルに上げたから、誤字のチェックして、50部冊子にしてくれる?」

それなら――って。
噂に怯えて、私に仕事を頼めなかったのだろうか。

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