桜田課長の秘密
「お待ちしていましたよ」

こちらに向かって手招きしたその顔は〝シジミの皮〟を脱ぎ捨てて、ニタリ――と、妖艶に笑っている。

「皮……被っておいてくれませんか」

「そのセリフ。なんだか変質的な厭らしさが漂って、グッときますね」

「セクハラで訴えますよ」

「クビにしますよ」

ぐうっっ。
オマエをシジミ汁にしてやろうか!
某閣下の口調で毒づきたい衝動を喉元で抑える。

「ああ、お忙しいんでしたね。本題に入りましょう」

悶える私に構うことなく、課長は分厚いファイルを取り出した。

「仕入れ営業から相談を受けましてね。購入予定の土地近辺の住人を対象に、アンケートを実施したんです」

また、他部署の案件を抱え込んだのか……

「15時、時間厳守で提出してください」

作業内容を説明され有無を言わさぬ口調で告げられる。

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