桜田課長の秘密
「他の業務で手一杯なんですけど……」

「相田君とランチに行く暇はあるのに、ですか?」

「っ!」

どうして、それを……

言葉を失った私に、軽蔑の眼差しが向けられる。

「朝から廊下でイチャついていたでしょう。あまりに声が大きいので聞こえました」

「イチャついてなんかっ――」

「言い訳は結構。君と違って1分1秒が惜しいので、どうぞご退出ください」

言い終わったころには、すっかり〝シジミの皮〟に潜り込んでしまったようだ。
表情から色が消え、無機質な空気を醸し出している。

くうっ、なんて勝手な男だろう。

「15時ですねっ、失礼しました!」

もうこれ以上は、1秒だって同じ空気を吸いたくない。

ファイルをひっつかんで、速足で部屋を出る間際。

「本日は夕食を済ませて、20時にいらしてください」

パソコンの画面を見たまま声をかける姿に、ついには怒りが沸点に達し。

「かしこまりましたっ! 佐田倉、大先生!」

ドアを半開きにしたまま、大声で叫んでやった。

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