桜田課長の秘密
「綿素材なので、快適だと思いますよ」

「そうではなくて! 私は仕事に来ているんです、頭痛くらいでサボれません」

強い口調で抗議すると、課長はとんでもないと、首を振る。

「これも立派な仕事ですよ。僕の用意した(しとね)に身を横たえる君を視姦し、みだらな妄想を巡らせつつ執筆に励みますので、ささ、遠慮なさらず」

「それじゃあ、お言葉に甘えて……って、怖すぎますっ!」

だめだ。
この人といると、変になる。

「なにもしませんってば」

「絶対にイヤです」

「強情な方ですね、力ずくで寝かせましょうか」

甚平の袖を大きくめくり上げ、ジリリと詰め寄られる。

うそ、なによ、その腕……

剥き出しになった上腕に、恐怖を覚えた。


「わ、分かりました、着替えてきます!」

ワンピースを掴んで逃げ出し、自由に使っていいと言われた空き部屋に飛び込み、しっかりと戸襖を閉める。

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