桜田課長の秘密
* * *

誰かが言っていた。
本当に驚いたときには、声も出ないものだ……と。
そしてその言葉に嘘偽りがなかったと、今、身を持って体験している。

おちつけ……私。
まずは、深呼吸してみようか、うん。

ついでに瞼もおろして、目の前の綺麗な顔を視界からシャットダウンしてみた。

これが悪夢でないのなら、私は今、桜田課長に抱き締められている。

彼は気持ちよさそうに眠っているのだけど。
無駄に鍛えられた上腕二頭筋が、首の下と腰の位置に巻き付いているので、逃げ出すことは叶わない。

どうして……
なぜ、こんなことになっているんだろう。

霞がかった脳をなんとか動かして、記憶をさかのぼる。

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