桜田課長の秘密
ええと、あの後……

そう、着替えて仕事部屋に戻った私を見るなり、課長は、

「とても良く似合っていますよ」

と、蕩けるような笑みを浮かべた。

恥ずかしさに耐えきれず『お休みなさい』と、布団の中に飛び込むと、枕元にノートパソコンを持って来た彼は、宣言通り。

〝自らが用意した(しとね)に身を横たえる私を視姦しつつ〟執筆を開始した。

息苦しくなって、布団の隙間から顔を出す。
その度に、こちらを見つめる課長と目が合って。
その度に、奥深くに潜り込んだ。

「僕のことは気にせず、お休みください」

ならば、そのギラギラした目で凝視するのをやめてくれ。
眠ったら最後、何をされるか分かったものじゃない。

この状況で眠れる女なんて、日本中どこを探してもいるはずが――――

< 70 / 90 >

この作品をシェア

pagetop