幼なじみの彼とわたし
翌日の土曜日、待ち合わせたイタリア料理やさんに行くと、千尋はすでに来ていた。

お二人様ランチセットを頼み、パスタとピザを注文する。
サラダやデザートもついてるし、シェアして食べれるのがいいよね。


「で?なんで様子がおかしかったの?」


単刀直入に聞いてくる。


「なんで、って…。あ、千尋の話から…」


話をそらそうとしても「メインは亜衣紗の話!」と一蹴される。
これは覚悟を決めるしかないか。


「あのね、失恋しちゃったの。それをわたしが寝言で言ったのか、遥ちゃんが聞いたみたいで…」


できるだけ明るく言う。
たぶん、何ともない様子を演じれてると思う。


「………は!?」


たっぷり間があったあと聞こえてきたのは、たったの平仮名一文字。
聞こえにくかったのかなぁと思い、千尋のほうを見ると大きな目がこぼれ落ちそうなほど大きくなっている。
おまけに口も「は」と言ったっきりなのか、ぽかんとあいたままだ。


またしばらく間があく。


「だから失恋したのよ!」


何回も言わせないでよ、と言うと「それは1回めで聞こえてた」となぜか強く言われてしまい、言葉につまってしまう。


「ってか、寝言でっていうのも気になるけど。それより、誰が誰に失恋したの?」


目の前には今度は大きな目をぐっとつり上がらせたような千尋の顔。
今日はいろんな表情が見れるなぁ、なんて思う余裕もなく。


「千尋…、なんかちょっとこわいよ」

「そりゃそうよ。目の前の誰かさんが急に“失恋した”なんて言うんだもん」

「…うっ。ごめん…」


千尋の顔が見れない。

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