お前が好きだなんて俺はバカだな
「美礼先輩って、次期会長の座とか狙ってたりします?」

先輩の手伝いをしながら、私はそうきいてみた。

「まさか。会長どころか副会長もごめんだね。」

「でも、今はほぼ先輩がやってるようなものじゃないですか。委員会自体も、先輩が声をかけなきゃ動かないみたいですし。」

「全くだよな。モテる男はつらい...。」

いや、そのほんとにつらいんだよアピールやめて。

からかってやろうと思ったのにやりづらいなぁ。

「そもそも嫌なのになんで生徒会入ったんですか。」

「会長の圧力。」

「確かに怖いですもんね。
でも、先輩が圧力に屈するなんて意外です。」

「まったくだ。他人にいい顔はするものじゃないよな。」

「でも、今はそんなに嫌でもないでしょう?」

「なんで?」

「だって、なんだかんだ言って、先輩と会長は仲良いですし、行事とかやってるの見ると楽しそうですよ?」

「そうなるまでが大変なんだよ、この仕事。」

「結果みんなが楽しいならいいじゃないですか。」

「俺は楽して楽しみたいんだよ、できれば。」

「そんなのわがままですよ。」

「そのわがままを妥協してるから結果大変なんだよ。本来だったら別に下級生に全部仕事押し付けてもいいんだから。」

そうか...。

特に来年にでもなっちゃえば、先輩たちは指示するだけでもいいんだもんな。

「やっぱり先輩ってお人好しですね。」

「嫌味っぽく言うな。
優しい先輩ですねと言え。」

「つくづくナルシストですねー。
先輩とはいえ見苦しいです。」

「うるさいなぁ。自己肯定だよ。ポジティブなのはいいことだろ。」

「はいはい。そうでございますねぇ。」

とか言ってると、先輩からお返しの、ど突きが飛んでくる。

「いたいっ!
女の子の手をあげないでください!
パワハラですよっ!!」

「もしそれで訴えられたら一貫して教育で通すね、俺は。一度でもこんな後輩の世話してみろって言ってやる。」

「こんな後輩で悪かったですね。
別に嫌ならほっといてもいいんですよ。」

「ほっといたら、学校にお前のドジが伝染するだろ。」

やっぱりいつもの先輩だ。

いつもの意地悪な先輩じゃないかっ!

「もー!
先輩のバカっ!」

「そうやって感情的になるの良くないぞ。
まあ、...でも。」

「でも、何ですか?」

「確かに俺はバカかもしれない。」

な、何で急に開き直ってるんだこの人。

「最近は、こんなお前のバカがうつってるからさ。」

なんだ、結局私への嫌味か。
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